優緋の部屋

日々の出来事、想うこと、信心について、二次小説、短歌などあれこれ

二次小説

シホンとジュニ ⑤

夕方 ナウンが帰り、 ジュニの夕食が済んだところで、 シホンとジュニは談話室に行って実家に電話した。ふたりの交際を報告するためだ。 「もしもし、ジュニです。お父さんいるかな?報告したい事があって。電話、出られるかな?」 「今呼ぶわね、ちょっと待…

シホンとジュニ ④

その日の夜 夕食も終えて、 歯磨き・洗面も済ませて、後は寝るばかり。 夕食は残さず食べられたからか、体力もだいぶ戻ってきて、自分で車椅子に移動して、独りでトイレにも 行かれるようになった。 キムさんに、「談話室に行って来ます。」と言って、携帯を…

シホンとジュニ ③

「ジュニさん、ちょっと電話してくるから。直ぐ戻る。」 そう言って、廊下に出た。 会社の部下に電話をした。 「あ、もしもし、ナム・シホンです。夜遅くに、すまない。 申し訳ないんだが、明日休ませてもらう。友人が体調を崩して、今病院なんだ。 ひとり暮…

名前を覚えていてね

その子は、たぶん小学五年生位の女の子だった。 インギュ食堂の前で時々見かける可愛い子。 明るくて、ハキハキと話す元気の良い女の子だ。 よく、インギュ食堂の店先で売っている餅を、おばあちゃんにねだっているのだが、 おばあちゃんも度重なると 「もう…

シホンとジュニ ②

12月になり、冬も本格的になってきた。 「ねぇ、ジュニ、クリスマスの予定は?何か決めてあるの?」 と友人に尋ねられた。 「クリスマス? バイトもかき入れ時だし、課題もあるから、特に予定はないわよ。 バイトと勉強。」 「え~、クリスマスだよ?パーテ…

シホンとジュニ ①

「母さん、俺大学卒業したら、やっぱり韓国に戻る。向こうで就職するよ。」 「せっかくアメリカの大学に入って、成績も良いんだから、こっちで就職できるのに、勿体ないんじゃない?」 「こっちで友だちもできたけど、やっぱり韓国の方が良い。母さんたちだ…

① クォン・ミンジュ

高校3年生になった。 あの“交通事故”から目覚めてから、私は少し変わったと思う。 ナム・シホンはアメリカに移住していなくなった。 シホンがいないのは淋しいけれど、インギュは友だちとして変わらず優しく接してくれている。 「ねぇ、インギュ。私、あの交…

チャニとチャニョン

僕は、オ・チャニ。 ノクサン高校の2年生。 クォン・ミンジュの同級生だけど、 彼女はきっと、僕のことなど知らない。 僕は内気だから、友だちもいなくて、 きっと大人しくて目立たないやつと思われているだろう。 担任でさえ名前を忘れるくらい。 それは、…

自分に嫉妬する

2022年 飛行機事故でク・ヨンジュンの肉体は滅び、その中に入っていた俺(ナム・シホン)の意識は過去へ遡り、2002年のバス事故後の 自分の身体に戻った。 俺は、6週間意識不明だったという。母は、もうこのまま植物人間になってしまうのでは、と思ったそうだ…

叔父の願い

2003年 姪のミンジュが亡くなって、早いものでもうすぐ5年が経とうとしている。 ミンジュがなくなった当初は、姉は泣いてばかりいるし、私も仕事に手がつかなかった。 幸いだったのは、ミンジュの弟のドフンが、姉の不幸から母を自分が支えなければと随分し…

消えていく記憶

1998.10.14 10.13のミンジュの死を回避した私(ジュニ)は、インギュにカセットプレーヤーとカセットテープの処分を頼んだ。 「これがなくなれば、ミンジュが帰ってくるはずよ。 チャニョンの意識はチャニの身体から抜け出たし、もう危険はないはず。 これがあ…

眼差し

インギュとふたりで、ミンジュの誕生日パーティーをした後、ミンジュを家まで送った。 そして、告白された。 俺は、ミンジュに「異性として見たことはない。好きになることはない。」と正直に告げ、 その場を立ち去った。 俺がいなくなってから、 ミンジュは…

想いの強さが全てを変える

チャニョンに粉々にされた カセットプレーヤーを 何とか修理してもらい、過去を変えるため私はもう一度1998年に行った。 けれど、ミンジュの身体に入ったはずなのに、何処か暗い洞窟のような所へ 行ってしまった。 ここはきっと、私がミンジュの身体に入って…

ミンジュの後悔

運命の1998.10.13 私は、自ら死を選んで飛び降りた。 必死に説得するインギュの言葉も聞かずに。 私の魂が肉体から抜け出て漂っているのか、私を抱きしめて泣くインギュの姿が見える。 走ってやって来たシホンにインギュは、 「僕が殺した」と言った。そして…

あなたのいない誕生日

あの日からもう一年が経った。 ニューヨーク支社に転勤が決まり、 ヨンジュンとケンカしたまま、誕生日プレゼントも置いてソウルを発ってしまった。 両親が、お金のことで ケンカが耐えない時期があった。私も、大学を辞めて働くべきか悩んだ。 ヨンジュンと…

1年が過ぎても…

飛行機事故から一年が過ぎた。あなたがいなくなってから。 私は、普通に朝起きて仕事に行き、時には同僚とはしゃいだり、 飲みに行ったり一見何事もなかったように振る舞い日々を過ごしている。 周りの人は、私はもう恋人の死から立ち直ったと思っているかも…

会いに行く

仁川国際空港 これから俺は、ニューヨーク支社に赴任したジュニを追ってアメリカに行く。 俺の顔を見たら、ジュニは怒るかもしれない。 「私のために後を追いかけてきそうで…。1年間お互いに 将来のためするべきことをしよう?」君はそう言ったから。 でも、…

インギュの想い

ナム・シホン。 君に嘘をついて、自ら命を絶つ僕を許して欲しい。 僕も、もうミンジュのように楽になりたいんだ。 おばあちゃんが生きていれば、まだ頑張ることが出来たかもしれない。 でも、ミンジュもいない、おばあちゃんもいないこの世界で、頑張って生…

ク・ヨンジュンになった日

2002年サッカーワールドカップで賑わう韓国に一時帰国した。 国中がお祭り騒ぎで盛り上がっている。だが、俺の心は重く沈んでいた。 亡くなる前、ミンジュは「もう、ハン・ジュニが戻ることはない」と言った。 たとえそれが嘘だったとしても、クォン・ミンジ…