優緋の部屋

日々の出来事、想うこと、信心について、二次小説、短歌などあれこれ

あなたのいない誕生日


あの日からもう一年が経った。

 

ニューヨーク支社に転勤が決まり、

ヨンジュンとケンカしたまま、
誕生日プレゼントも置いて
ソウルを発ってしまった。

 

両親が、お金のことで

ケンカが耐えない時期があった。
私も、大学を辞めて働くべきか悩んだ。

 

ヨンジュンとの生活で、
同じ事を繰り返したくなかった。
だから、経済的な準備をしっかりしてから
結婚したかった。

 

その気持ちを分かってもらえなくて、
私も少しムキになってしまったのだ。

あんなケンカは、
初めてだったかもしれない。

 

だから、後悔していた。

ニューヨークの新しい部屋に落ちついて、
ヨンジュンに連絡をして
謝って分かってもらおう。
ちゃんと話せば、
きっと分かってくれるはず。

 

そう思って携帯を開いた時、
電話が鳴った。
ヨンジュンのお姉さんからだった。

 

「もしもし、ジュニです。

無事にニューヨークに着いたので、
これからご連絡しようと

思っていたところでした。
ご無沙汰しているのに
お姉さんからお電話いただいてしまって
スミマセン。
お母様もお元気ですか?」

 

「ジュニ…。」そう言ったきり、
お姉さんは押し黙ってしまった。
声の様子もおかしい…。

 

「お姉さん、何かありましたか?」

 

「驚かないでね。

ヨンジュンが乗った飛行機が
事故を起こして…亡くなったの。

遺体は見つかってないけど…。」

 

ヨンジュンが…?嘘ですよね。」

 

「急いで身辺整理して、
あなたを追いかけて
ニューヨークに行こうとしていたの。
一週間でも離れてはいられないって…。


ごめんなさいね、ジュニ。

ヨンジュンとの将来のために、
やっと念願のニューヨーク勤務になったというのに。」

 

「お姉さん、私、会社に連絡して、
すぐにソウルに戻ります。」

 

ああ、やはりヨンジュン
私を追いかけてきたのだ。
あんな別れ方をして発つのではなかった。
もっとちゃんと話し合うべきだった。

 

こうなることをヨンジュン
予感していたのだろうか?

 

一度離れたならば、
もう永遠に会えないかもしれないと
彼は言った。

その通りになってしまった。

 

私のニューヨーク支社勤務は
取り消しになった。


彼の葬儀が済むと、
ふたりで住んでいた部屋に戻り、
何日か休んだ後、
以前のように
同じ部署での仕事に復帰した。

 

部屋も日常も
何もかも変わっていない。
変わったのは、ただ彼が、
ク・ヨンジュンがいなくなっただけ。

 

それでも、そこかしこに
彼との思い出が残っていて、
扉を開ければ、“ヨンジュン”と呼べば、
“なに?”と顔を見せそうな気がする。

そこに彼が居そうな気がする。

 

まだ、
私は彼の死を受け入れることが出来ない。

 

数日前、
初めてあなたの居ない誕生日を

過ごしました。

 

仕事に紛れていて自分でも忘れていても、
必ずあなたは誕生日を祝ってくれたよね。

 

一生、誕生日は
ちゃんと覚えていて
祝うから任せてと言ったのに…


…嘘つき…

 

誰かが、会社の受付に

花束の籠を届けてきました。
私が一番好きなシャクヤクの花かご。

 

あなたが天国から降りてきて

届けてくれたの?

それとも、何処かで生きているの?

 

ねぇ、ヨンジュン

今日は、とりわけあなたが恋しい。

お願い、一度で良いから会いに来て。

 

返信が来ることのない、
既読になることもないlineを、
今日もあなたに書きました。