優緋の部屋

日々の出来事、想うこと、信心について、二次小説、短歌などあれこれ

想いの強さが全てを変える

チャニョンに粉々にされた

カセットプレーヤーを

何とか修理してもらい、
過去を変えるため
私はもう一度1998年に行った。

 

けれど、
ミンジュの身体に入ったはずなのに、
何処か暗い洞窟のような所へ

行ってしまった。

 

ここはきっと、
私がミンジュの身体に入っていた時、
ミンジュが居た場所だ。

 

おそらく、
意識の片隅なのだろう。

 

だから、ミンジュの過去の記憶が見えたり、今、ミンジュが見ている物、
聞いていることが
私にも見えるし聞こえるのだ。

 

そして、ミンジュに話しかければ、
ミンジュには私の声が聞こえる。

鏡の前に立つと、
彼女は私の姿が見えるようだ。

 

私は、必死になってミンジュに訴えた。

 

チャニの身体に
弟のチャニョンの意識が入っていること。

ミンジュを殺そうとしていること。

そのせいで、
インギュもシホンも死んでしまうこと。

シホンとインギュにこの事を話して、
チャニョンを止めないと、
大変なことが起こると。

 

しかし、自分の身体を取り戻し、
シホンと親しくなれたミンジュは、
その歓びに浸って
耳を貸そうとしなかった。

 

「あなたの時間は終わり。
これからは私の時間。
今までやりたかったことをやる。」
と言って。

 

「あなたが居る場所にいた時、
私は何万回も練習したの。
あなたの仕草を真似る練習を。

 

必要ならもっと練習して、
ハン・ジュニより

ハン・ジュニらしくなって、
シホンに好きになってもらって
優しくしてもらう。」

 

ミンジュは私(ジュニ)のふりをして、
楽しく遊ぶことばかりを考え
行動していた。

 

あなたの好きなシホンも危険なのに、
友だちのインギュも不幸にしてしまうのに、どうして言うことを聞いてくれないの…?

 

私は、全て見えているのに
何もできないもどかしさに
ため息をついた。

 

しかし、
いくらミンジュが頑張って

私(ジュニ)のふりをしても、
シホンは気付いてしまった。

 

「ジュニじゃなくて
ミンジュに戻ったんだろ?」

 

「違うよ。
事故から目覚めた時から、
2023年から来たハン・ジュニだって
言ったでしょ。」

 

「ほんとうのことを言ってくれ。

いくら真似をしても、
仕草と眼差しで分かってしまうんだ。

筆跡だって違うじゃないか?

家から出る時からミンジュに戻っていた。

でも、その前までは、
確かにハン・ジュニだった。」

 

「私がほんとうのことを言っても、
今までみたいに優しくしてくれて、
好きでいてくれるの? 
違うでしょ?

 

ほんとうに2023年から来た
ハン・ジュニと信じてたの?

 

あなたの好きそうな
元気な女の子のふりをして、
気を惹くためよ。
全部嘘よ。」

 

「じゃあ、もう二度と
ハン・ジュニには…
会えないのか?」

 

「なぜ私に聞くの?
全部嘘なんだから、
当たり前じゃない。」

 

シホンは、ミンジュのその言葉を聞いて
涙を零した。

 

ミンジュ、
大好きな人を何故悲しませるの?

 

シホンが好きなのは、
やっぱりジュニで、
いくら真似をしてもダメなんだ。

私は生きている価値がないんだと、
ミンジュは思ってしまったのだ。

 

チャニョンは、
ミンジュを殺す寸前で警察に起こされて、
チャニの身体から抜け出た。

 

でも、インギュの説得も聞かない
ミンジュの自殺を、
私は止めることが出来ず、
カセットテープが絡んで
2023年に戻ってしまった。

 

何も変えられなかった。

 

もう一度プレーヤーとカセットテープを
修理してもらった。

 

「一応治しましたが、
再生はできませんでした。」
電器店の店主はそう言った。

 

もう、ダメなんだろうか?

 

私は車を走らせて
漢江の畔に車を停めた。

 

プレーヤーを取り出して
スイッチを入れる。

 

音楽は再生されない。

 

もう一度スイッチを入れ直す。

それでも、
動かなかった。


お願い。

もう一度だけ、
あなたの時間に行かせて。

 

私の祈りとミンジュの祈りが
届いたのだろうか?

 

プレーヤーにスイッチが入り
音楽が流れ、
私は身投げ寸前の
ミンジュの身体に 入った。

 

すんでの所でインギュの手を摑み、
私(ミンジュ=ジュニ)は助かった。

 

これで、
全ての、不幸へ不幸へと流れていた
過去の歴史の流れが変わったはずだ。

 

カセットテープとプレーヤーは私が預かり、インギュに処分を託した。

 

カセットテープとプレーヤーがなくなれば、チャニョンがチャニの身体に入ることもないから、
ダヒョンが殺されることもないはずだ。

 

でも、おそらくシホンの記憶から、
私との思い出も、
ク・ヨンジュンとして過ごした日々のことも
全て消えてしまうだろう。

 

私は、その事に気付いていた。

だから、最後のデートをシホンとしようと
ふたりで海に出掛けた。

 

でも、私だけでなく、

シホンも気付いていたのだ。

「これが最後なんだろう?」と。

 

「でも、
記憶がなくても、
どこに居ても、
どんな時間でも
必ずまた会おう。

必ず君を見つける。」

 

そう約束して、
全ては消えていった…。