優緋の部屋

日々の出来事、想うこと、信心について、二次小説、短歌などあれこれ

1年が過ぎても…

飛行機事故から一年が過ぎた。
あなたがいなくなってから。

 

私は、普通に朝起きて仕事に行き、
時には同僚とはしゃいだり、

飲みに行ったり
一見何事もなかったように振る舞い
日々を過ごしている。

 

周りの人は、私はもう恋人の死から
立ち直ったと思っているかもしれない。

 

 

彼の追悼ミサに出席した。


周りの人たちは、
もうク・ヨンジュンの死を

受け入れる準備が出来ているように見える。

 

なぜ、私には出来ないのだろう?


遺体と対面したわけでもない。
遺品さえ目にしてないのに、
どうしたら彼が死んで
もうこの世にいないなんて
そんな事を受け入れられるんだろう?

 

何もかもが、
彼との幸せな日々の記憶と繋がる。


歯を磨いていても、

ニュースを見ても…

 

ミサから抜け出した私を
お姉さんが追いかけてきた。


そして、私の手を見て
ヨンジュンからの指輪を

はめることもなくて…可愛そうに。

誕生日プレゼントの中に隠すと

言っていたのよ。

受け取らなかった?」
と言う。

 

私は、慌てて家に戻り

ヨンジュンからの
プレゼントのアクセサリーボックスを

確認した。


隠し場所が分からない。
引き出しを出して中を確かめてもない。


落胆して引き出しを戻そうとした時、
引き出しの横に何かあるのに気づいた。

 

隠し引き出し?
軽く押すと、小さな引き出しが出て来た。


きっと、ヨンジュンはここに

指輪を入れたのだろう。

 

でも、そこに指輪はなかった。

 

ケンカ別れするように
プレゼントを置いたまま
私がニューヨークに発ってしまったから、
彼は自分で渡そうと
引き出しから出したのだろう。

 

そして、そのまま…

指輪と共に、

ヨンジュンが戻ることはなかったのだ。


数日後
見知らぬ人から

1枚の写真が携帯に送られてきた。

 

古い写真のようで、

ヨンジュンと思われる男子と

私にそっくりな女の子、

そして見知らぬ男の子が写っている

写真だった。

 

送り主に話しかけても返信はない。

 

写真の背景に写っている

“27レコード”と言う店からたどって

調べてみると、

その店は既になく、

ただ、そのオーナーが
ソウルで“27カフェ”という店を

営んでいることを摑むことが出来た。

 

見つけてくれた友人と退社後、
そのカフェに行ってみた。

 

店に入り、

オーナーとおぼしき人と会った途端

「クォン・ミンジュ?」と言われた。

 

オーナーと話をすると、

その写真はオーナーが撮った物だという。


女の子はオーナーの姪で、

クォン・ミンジュ。
一緒に写っているのは、

学校の友人だろうということしか

分からなかった。

 

「写っている男性の事でお聞きしたい事があるので、姪御さんの連絡先を教えていただけませんか?

ご迷惑をお掛けすることはありませんので。」

 

「いや…それは出来ないんです。
姪は、他界しました。

随分前に。」

 

結局、

ク・ヨンジュンの事は何も分からなかった。

 

「あの写真は1998年に撮ってるから、
ク・ヨンジュンはまだ小学生で11歳。
だから、写真の彼は

ク・ヨンジュンじゃない。
それだけは分かったんだから、

良いじゃない。」と

カフェを探してくれた友人は言った。

 

「もし、彼がク・ヨンジュンで、

一緒に写っている女の子が

彼の初恋の人だったら、
彼を忘れることが出来たのかな?」

 

私は、彼を忘れる理由を探していた。


もし、

彼が初恋の人に似ていたから

私に恋をして、

初恋の人を重ねていただけで、
本気じゃなかったと思えたら
忘れることが出来たんじゃないだろうか?

 

そう思えるほど、
色んな意味でもう限界だった。

 

彼のいない淋しさに耐えること。


歓びも哀しみもつらさも全て
分け合ってきたのに、
何を書いても返事のないline。

 

この間、あなたのいない誕生日を
初めて過ごしました。
誕生日祝いは、
一生任せてと言ったのに、
あれは嘘だったの?

 

誰かが誕生日に、
私の好きなシャクヤクの花の花籠を
会社の受付に置いていきました。

 

こんなことをしてくれるのは、
誕生日も

私の好きな花も知ってるのは
あなた以外誰がいるの?
どうして、姿を見せてくれないの?


あのまま、韓国に戻らず

ニューヨークに留まれば良かったのかしら?

 

元の部署に戻って、

以前と変わらず仕事をしている。

あなたがいた時と変わらずに。

 

 

そう、何も変わっていない、
一年経っても。

 

ただ、ク・ヨンジュン
あなたが側にいなくなった事以外は。