優緋の部屋

日々の出来事、想うこと、信心について、二次小説、短歌などあれこれ

シホンとジュニ ⑤

夕方

ナウンが帰り、

ジュニの夕食が済んだところで、

シホンとジュニは談話室に行って
実家に電話した。
ふたりの交際を報告するためだ。

 

「もしもし、ジュニです。
お父さんいるかな?
報告したい事があって。
電話、出られるかな?」

 

「今呼ぶわね、ちょっと待って。

お父さ~ん、ジュニから電話よ。


じゃ、代わるわね。」

 

「もしもし、

そっちから電話してくるなんて珍しいな。

元気でやってたか?」

 

「うん、今日は報告したい事があって
電話したの。

あの、実はお付き合いしてる人がいて、
両親に挨拶したいって

言ってくれてるんだけど、

今直ぐ行けないんで、

電話ですることじゃないんだけど、

取りあえずっていうか、
電話しました。」

 

「今度の休みにでも、

来てからで良かったのに…」

 

「そうなんだけど、事情があって…
彼と代わるね。」

 

「もしもし、お父様ですか?
初めまして。

ナム・シホンと申します。


お嬢さんのジュニさんと、

結婚を前提に交際をしています。

 

ご挨拶に伺うべきなのですが、

実は、先日
ジュニさんがアルバイト中に倒れて、

明日には退院予定なのですが、

まだ入院していました。

 

今日、検査結果を聞く時に

同席する関係もあって、

事後承諾になってしまいましたが、
婚約者ということにさせていただきました。」

 

「ジュニは、何処か悪かったんですか?」

 

「今回の入院は、

過労とストレスだったようです。


ただ、念のため検査していただいたところ、肝機能の数値が高いものがあって、

今直ぐ治療は必要ないものの、

生活習慣を見直すことと、

定期的な検査を勧められました。

 

お父様の承諾を得ないまま

勝手を致しましたこと、

どうぞお許しください。


それと、改めて

交際を認めていただきたいと

電話いたしました。」

 

「ジュニが大変お世話になったようで、
ありがとうございます。
ジュニの身体が落ちついてからでも、
どうぞお出で下さい。
交際については、

ジュニが選んだ方なら

間違いないと思いますので、

どうぞよろしくお願いします。」

 

「それと、今回の検査で、

肝機能の衰えの可能性が

否定出来ないという診断でした。

ですので、アルバイトをしながらの学生生活は身体を壊してしまう可能性があります。

 

授業料は、奨学金で賄えるかと思いますが、生活費を私が援助させていただいてもよろしいでしょうか?
今は、小さいながら会社を経営しています。
それ以前は、大手出版社に勤務していましたので、多少の蓄えもあります。」

 

「親が不甲斐ないばかりに、

娘に苦労させています。

ありがとうございます。


ジュニに代わっていただけますか?」

 

「もしもし、お父さん?
心配掛けると思って、

連絡しないでごめんなさい。」

 

「そんな事は、いい。
それより、いい人に巡り会えたようだね。
元気になったら、連れておいで。

母さんと話すかい?代わるよ。」

 

「もしもし、ジュニ。
彼氏が出来たの?今度紹介してね。」

 

「うん、ナム・シホンさんというの。
おばあちゃんの家、

ノクサンにいた時に、
私が小学生だった時、

可愛がってくれた
高校生のお兄さんだったのよ。
偶然再会したの。」

 

「そうなの?
今度来た時にゆっくり聞かせてね。
シホンさんによろしくね。」

 

「シホンさんと代わらなくていい?」

 

長くなるからと、それで電話を切った。

 

「シホンさん、ありがとう。
父も喜んでくれた。
母もよろしくって。」

 

「早くキチンとご挨拶に行きたいけどね。
まず、ジュニの体調を整えてから。
年末年始には、帰るべきなんだろうけど、
今回は無理しない方が良いと思うよ。

春、暖かくなってからにしよう。」

 

「そうね。
うちはそれでいいとして、
アメリカのご両親には、
どうしたら良いかしら?

ご挨拶もだけど、病気のある嫁なんて、
普通敬遠されるわよね。」

 

「別に、うちだって継がなきゃならない会社がある財閥じゃないんだから、

そんな事気にする必要もないし、

隠すわけじゃないけど
わざわざ言うこともないと思うよ。

 

僕は、もう独立した大人なんだし、

ジュニは、僕の妻になるんであって、

ナム家の嫁になる訳じゃないんだから。

 

祖父母もアメリカで亡くなったし、
両親もアメリカに永住するつもりなんだと思うよ。

 

子どもが持てないかもとか、心配してる?」

 

「うん、少し…、考えるかな。」

 

「もし、そうなったとしても、

女性として
ジュニが劣ってる事ではないし、

子どもは、養子を取ることも出来るし、

親を必要としてる子の

里親になることも出来る。

気にすることじゃないよ。


ジュニが、意外と古風な考え方することが
ちょっと驚きだな。」

 

「普段はこんな事考えないのにね。
弱っていると、

自信がなくなって、

世間の常識とか周りの目を

気にしちゃうのかな。」

 

「ジュニは、どうであっても

僕にとっては唯一の人なんだから、

自信を持って、堂々としていて欲しいな。」

 

「うん、そうだよね。
シホンさん、ありがとう。
アメリカのご両親には、手紙を書こうかな。一緒に写真を撮って。どう?」

 

「そうだね。
それ、いいかも。
その後に、テレビ電話したら良いんじゃないかな。そうしよう。」