
私は、ラジオ好きというほどではありません。
普段、自分からラジオをつけることは、ほとんどありません。
小学生の頃には歌謡曲のベストテン番組を毎週のように聴いていましたし、高校時代には寝る前のルーティンで聴いていた夜のラジオ番組もありました。
それなのに、「ラジオ」と聞いて最初に浮かんだのは、番組でも音楽でもありませんでした。
ある朝、ラジオから聞こえてきた訃報でした。
いつもの朝、車の中で
仙台に住んでいた頃、毎朝、夫を会社の近くまで車で送っていました。
車に乗ると、夫がラジオをつけます。
私にとってラジオは、自分から「聴こう」と思って聴くものではなく、いつもの朝の車の中に流れている音でした。
その朝も、いつもと同じでした。
私は助手席で、うとうと居眠りをしていました。
すると突然、
パク・ヨンハさんが亡くなったというニュースが聞こえてきました。
ビクッとして、飛び起きました。
眠気なんて一瞬で吹き飛びました。
『冬のソナタ』でサンヒョクを演じていたパク・ヨンハさん。
まだ若かった彼の突然の訃報を、私はラジオで知ったのです。日本でも活躍され、ファンもたくさんいる役者であり歌手。
それ以来、「ラジオ」と聞くと、あの朝の車の中がよみがえります。
好きではなかったサンヒョク
『冬のソナタ』を見ていた頃、私はサンヒョクが好きではありませんでした。
私が好きだったのはユジンです。
だから、ユジンを苦しめるサンヒョクには、
「もう、ユジンを自由にしてあげてよ、マザコン男💢」
と思っていました。
ところが、『冬のソナタ』の二次小説を書くようになると、少しずつ変わっていきました。
ユジンやジュンサンだけではなく、
「サンヒョクは、あの時どう思っていたんだろう」
と、サンヒョクの側から物語を見るようになったのです。
ドラマを見ていた時には好きではなかった人物なのに、その心の中を想像して書いているうちに、サンヒョクもまた、私の中で大切な登場人物になっていきました。
みんなで書いた『お昼の校内放送』
昔の作品を辿ってみると、私は物語の中でも「放送」を何度も書いていました。
『お昼の校内放送』という連作があります。
連作というのは、主催する人がいて、二次小説仲間が物語を書きつないでいくものです。
前の人が書いた物語を受け取って、次の人が続きを書く。
また別の人が続きを書く。
みんなで書くので、40回近くまで続くこともありました。
連作は、基本一回読み切りなのですが、ひとつの題名で書きつなぐので、一人で書くのとはまた違った楽しさがあります。
『お昼の校内放送』の中に、『追悼放送』という一作があります。
亡くなったと思われていたカン・ジュンサンを偲ぶ、校内での追悼放送です。物語の中で、ジュンサンは大晦日に亡くなったことになっています。年が明けて最初の放送で何もなかったようにお昼の放送があるのは変じゃない?と思ったのがきっかけでした。
もちろん、『冬のソナタ』を知っている人なら分かるように、ジュンサンは本当は生きています。
その追悼放送を発案したのが、放送部の部長だったサンヒョクです。
現実の私は、車のラジオから、サンヒョクを演じたパク・ヨンハさんの訃報を聞きました。
一方、昔書いた物語の中では、サンヒョクが、亡くなったと思っているジュンサンのために追悼放送を企画していました。
今になって二つを並べてみると、なんとも不思議な重なりを感じます。
サンヒョクと言えばシニョン
『お昼の校内放送』の別の回には、シニョンという女子高生が登場します。
目立たないけれど、サンヒョクに憧れている後輩の女の子です。
優秀で真面目で、顔だってハンサムなサンヒョク。
あんな男子が学校にいたら、教室の隅からひそかに憧れている女子が一人くらいいるだろう。
そんなところから生まれたのが、シニョンでした。
そのシニョンが、憧れのサンヒョクと一緒に校内放送をする回を書きました。
私は昔から、ラブラブな場面を書くより、
遠くから好きな人を見ている女の子を書く方が得意です。
自分自身、片思いばかりの人生だったからでしょうか。
だからシニョンは、自分でもお気に入りのキャラクターになりました。
6年後、シニョンはラジオ局にいた
『お昼の校内放送』を書いてから6年後。
今度は『バラ園にて〜』という別の連作に
シニョンを登場させました。
副題は『届けられなかったラブレター』
サンヒョクとチェリンの婚約披露パーティをめぐる物語です。
これも私一人で書いたものではなく、二次小説仲間と書きつないでいた連作でした。
私が書いたのは第27回。
そして、この連作はそこで止まっています。
私が主催した連作ではないので、勝手に続きを書いて完結させるわけにもいきません。
その後どうなったのかは、今でもちょっと気になります。
さて、6年ぶりにシニョンを登場させた理由は簡単です。
私の中では、
「サンヒョクと言えばシニョン」
だったからです。
そして高校時代、校内放送をしていたシニョンは、6年後に書いた物語の中で、ラジオ局のアナウンサーになっています。もちろん、初恋の人サンヒョクを追いかけてラジオ局へ入ったんです。
校内放送から、ラジオ局へ。
6年も間が空いているのに、シニョンの人生の中では「放送」がちゃんと続いていました。
ラジオから始まって
「私とラジオ」について書こうとして、最初は昔聴いていた番組に思いを巡らせるはずでした。
小学生の頃のベストテン番組。
高校時代、夜に聴いていたラジオ。
探せば、きっといろいろあります。
でも今回、最初に出てきたのは番組の名前ではありませんでした。
夫を会社へ送っていた、いつもの朝。
助手席で居眠りしていた私。
突然ラジオから聞こえてきた、パク・ヨンハさんの訃報。
そこから『冬のソナタ』へ行き、サンヒョクへ行き、昔書いた二次小説へ。
『お昼の校内放送』の『追悼放送』を通り、シニョンに会い、6年後の『バラ園にて』まで行ってみたら、シニョンはラジオ局のアナウンサーになっていました。
そして、またラジオに戻ってきました。
ラジオについて書こうとして、行き着いたのは昔、私が書いた物語でした。
記憶って、どこで何とつながっているのか分からないものですね。
そして今日もまた、昔の物語を辿りながら、昔の私に会いに行っていたようです。🍀
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